ヒッチハイクと俺

たまに見かける高速道路SAでのヒッチハイカー。

「お~若いのが頑張ってるな~」程度でいつもスルーしてた。

 

今日、仕事のために北上する途中、給油のために立ち寄ったSA。

ヒッチハイカーがいた。大学生くらいに見えた男性。

いつもなら上記のようにスルーしたけども、

我ながらなんだか知らないが声をかけてみた。

 

「青森方面だったら岩手山SAまでなら乗せられるよ」

「北に行くならぜひお願いします。」

 

気さくな若者だった。

大学生かと思ったら19歳のフリーター。

大阪からはるばるヒッチハイクで来たそうな。

 

「ちょうどバイト先が改装で10日くらい休みで、

 ずっと北海道行ってみたくて、夜勤明けでそのまま来ちゃいました」

 

おーおー若いねー。

その若さと勢い、おじさん大好きだぞ。

 

大阪から来た若者は、

もちろん東北の詳しい地名や名物はあまり詳しくなく、

「さっきの前沢は前沢牛で有名なところでさ、

 西の松坂、東の前沢っていうくらい美味いんだ。」

「もうすぐ岩手山が見えるよ。独立峰でキレイに見えるとカッコいいんだ。」

「曇ってて残念だね。帰る時上り線からも岩手山がキレイに見えるところがあるから、

 見逃さないようにね。」

などと話題になりそうな景色の話で間を埋める。

 

「二十歳になる前に何かしようと思って。

 で、ずっと行きたかった北海道にヒッチハイクで行こうと思ったんです。

 高校を卒業してフリーターになったけど、

 去年は何もしてなくてただ歳をとっちゃっただけだったんですよ。」

 

「今年は踏み出したじゃん。その一歩は大きいよ。

 歳をくうほどにはじめの一歩がおっくうになっちゃうからな。

 若さと時間があればいろんなことができるから。」

 

言葉の端々にフリーターという立場や金銭的な悩みは感じ取れたが、

説教臭いおじさんにはなりたくなかったので、

出来る限り前向きな言葉を送ろうとした。

 

19歳と36歳。

2倍近く生きてきたけど基本的な中身は何も変わっちゃいないのが不思議な感じだ。

19歳の時何をしてただろう、将来やりたいことなんて何も考えていなかったな、

などの追憶を辿るとともに、

勢いで大阪から飛び出してくる若さに嫉妬した。

その若さを応援したくなった。

 

「北海道まで行くなら青森から新幹線かフェリーか、八戸からフェリーだね。

 もし八戸からフェリーで行くならこのまま乗っていけばいいよ。

 青森の健康ランドに泊まろうとしてた?

 それなら八戸にも新八温泉って健康ランドがあるからそこまで乗せてくよ。」

 

仕事の時間まで余裕があったからそこまで具体的に提案できた。

若者は、ヒッチハイクが順調すぎる、とテンションが上がっていた。

大阪からヒッチハイクで行き先は北海道。決めてるのはそれだけらしい。

 

「よい旅を。楽しんでね。」

若者を健康ランドに下ろし仕事に向かう。

明日にはフェリーでさらに北に向かっているだろう。

 

ヒッチハイクの旅が終わり日常に戻った時に、

彼の中になにかいいものが残っていて欲しい、と願った。

がんばれ若者。