この世界の片隅に、をみて思った事をつらつらと

戦時下の日常。
食べること。働くこと。生きること。

うまく表現できない感情、感動があふれてずっと涙が止まらなかった。
嗚咽ではなく、スーっと自然に流れる涙。
子供が生まれてから涙もろくなったけれども、こんなに涙を流したのは祖父母の訃報を聞いた時以来だろうか。

小さい頃の記憶だけども、
祖父の肩には刀傷や銃で撃たれた傷が残っていた。

学校の課題か何かで、戦時中のことをおじいちゃんおばあちゃんに聞こう、みたいな事があった。
祖父は朝鮮半島に出兵していたらしい。
毎食キムチやら辛いものばかりで大変だったと話していた。
そして隊長が馬に乗って威張り散らしていたのが気に食わなくて、どうやってサボろうか、どうやって生きて帰ろうか考えていた、と話していた。
祖母は、大変だったよ〜、とあまり詳しいことは話してくれなかった。

祖父が朝鮮半島から生きて帰ってくれたから今俺がいる。
母方の祖父はフィリピンへ出兵していたと母から聞いている。
あの時代を生き抜いてきたんだ。

俺の実家は昔からの家なので、生きた時代は違えども、映画の中の風景と重なる部分がたくさんあった。
時に鼻歌を歌いながら針仕事をするシーンや、タンスの色合いや着物を収納する行李、背比べのキズのついた柱。
広島と青森、まるで違う場所なのにものすごく郷愁を覚えた。
きっと日本中で同じ様な感覚を抱いた人がいるに違いない。

主演の能年ちゃん、最初はあまちゃんのイメージからか違和感があったけども、
気がついたら能年ちゃんは完全にすずさんになってた。
ボーッとしてるけど朗らかで時に激しいすずさんを演じた能年ちゃんと、あまちゃんでアキを演じた能年ちゃん。
どちらも彼女しか考えられないくらい役になりきってた。
事務所問題で色々あるけれどもずっと応援したい女優さんだ。

色々なことを考え過ぎて全くまとまらない。
時代は違えど「生きる」ということは変わらない。食べること、寝ること、愛を営むこと。そしてその日常を守るために働くこと、戦うこと。

そんな日常の尊さ、大切さをしみじみと感じさせてくれる名作でした。
スクリーンが少なくて、気になってるのにまだ観られない人も、なんとか観て欲しいと思う作品です。
一人でも多くの人にこの映画が届きますように。